何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
「ーーそうだったんだ。それで、記憶が戻ってから、私から離れようと……」


悠はゆっくりと頷いた。


「美香が俺の彼女だって言い張っていて、恐らく桜が以前よりかは俺に会いづらくなっていると思ったから……そのまま、離れてしようとした。だから桜に冷たいことを言った。……会えば会うほど、別れづらくなっちゃうからさ」


卑屈な頬笑みを浮かべる悠。

ーー悠は間違っている。私は……。


「私は悠が何年眠りにつこうと、離れる気なんてないよ。ーー事故の前に言われても、絶対に同じことを言うよ」


私はきっぱりと断言した。悠は驚いたようで、目を丸くした。


「ーーでも。本当に起きないんだよ。もしかしたら……そのまま目覚めないかもしれない。そんな俺に、君を巻き込むわけ……」

「そんなの。忘れられることに比べたら、全然マシだけど?」


私は悪戯っぽく笑って言う。

まあ、さすがにそのまま目覚めない、っていうのは考えたくないけれど。でも、ひなげし病で死に至る確率は低いし、そんな後ろ向きなことを考えても、何もならない。

そうでなくても、人間がいつ死ぬかなんて誰にもわからないんだから。そんなことを考えたって意味は無い。

数年経てば、悠は絶対に帰ってくる。そう受け止めれば、そんなの辛いなんて全然思えない。
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