絶対領域
「こいつに手ぇ出すな」
静かな殺気を放ちながら、オールバックの男の子を睨みつける。
この人は、誰?
とても綺麗な金髪が、薄暗いここでも輝いて見える。
……あ、れ?
どこか懐かしい感じがするのは、私の気のせい?
「大丈夫か?」
金髪の男の子が、オールバックの男の子から手を放し、しゃがんだ。
私の顔を覗き込んで案ずる。
やっぱり、私はこの人を知っている。
もしかして、
「……あず兄?」
本来なら中学2年生のはずだけど、目の前のあず兄は、“男の子”じゃなくて“男の人”。
でも、その優しい灰色の瞳は、変わっていない。
「俺のこと、憶えて……」
「ねぇ、あず兄!これ、どうなってるの?私、中1だったのに髪も伸びて体つきも変わって……どうしてこんなに大人になってるの?」
「……え?中1って……」
「ここはどこなの?私はここで、何をしでかしたの?」
あず兄の服の胸元を握って、疑問をわめく。
知らなかったよ。
わからないことが、こんなにも恐ろしいなんて。