絶対領域




「こいつに手ぇ出すな」



静かな殺気を放ちながら、オールバックの男の子を睨みつける。



この人は、誰?


とても綺麗な金髪が、薄暗いここでも輝いて見える。



……あ、れ?

どこか懐かしい感じがするのは、私の気のせい?



「大丈夫か?」



金髪の男の子が、オールバックの男の子から手を放し、しゃがんだ。


私の顔を覗き込んで案ずる。



やっぱり、私はこの人を知っている。



もしかして、

「……あず兄?」



本来なら中学2年生のはずだけど、目の前のあず兄は、“男の子”じゃなくて“男の人”。


でも、その優しい灰色の瞳は、変わっていない。



「俺のこと、憶えて……」


「ねぇ、あず兄!これ、どうなってるの?私、中1だったのに髪も伸びて体つきも変わって……どうしてこんなに大人になってるの?」


「……え?中1って……」


「ここはどこなの?私はここで、何をしでかしたの?」



あず兄の服の胸元を握って、疑問をわめく。



知らなかったよ。

わからないことが、こんなにも恐ろしいなんて。



< 11 / 627 >

この作品をシェア

pagetop