絶対領域
人気が少なくなってから、数分経った頃。
ブオオオン!!
遠くから、迫力あるバイクの音が聞こえてきた。
どうやらあず兄の知り合いのようで、大きく手を振って、2台のバイクを招いている。
近づいてきたバイクは、そばで停められた。
各々のバイクから一人ずつ、男の子が降りて、ヘルメットを取った。
「悪い、遅くなった」
「皆、無事……じゃ、ない、みたいだねぇ」
黒縁メガネをかけた男の子と、濃いピンク色の髪をした男の子。
2人とも、口調とは裏腹に、表情は狼狽を隠せないでいた。
黒縁メガネの男の子のことは、……ううん、“も”知っている。
「……しん兄?」
「こいつのことも憶えてるのか!?」
自信なさげに呼んでみれば、あず兄が驚いた様子で聞いてきた。
やっぱり、この人はしん兄なんだ。
すごく大人っぽくなってて、びっくりした。
知っている人が多くなってきて、安心したのか。
唐突に、眠気と頭痛が一緒くたに襲いかかってきた。
プツン、と意識が途切れて、瞼が重たくなる。
「姉ちゃん!!」
せーちゃんの焦った声に反応する余地もなく、私は意識を失った。