絶対領域








「姉ちゃん、まだ目を覚まさないんだ……」


「記憶喪失、だっけ?それ本当なのぉ?」


「本当だ。……信じられねぇけどな」


「本人が自分のことを中1だって言ってたんだ」


「中1!?それって……」


「4年前、だな」


「じゃあ、僕のことも憶えてないんだね……」


「お前だけじゃない。俺のことも忘れてた。あいつらのこともな」


「4年間の記憶がごっそり失われたってことか」


「俺らが何者かも、忘れてるだろうな」


「お、思い出してくれるかなぁ?どうしよ、このまま一生忘れられたままだったら……っ」


「めそめそするな」


「だ、だってぇ……!」


「思い出すか否か以前に、目を覚ましていないんだ。何も、できないだろ」


「……姉ちゃん、早く、目を覚まして」







< 16 / 627 >

この作品をシェア

pagetop