絶対領域




脳内では、オルゴールの歌とオリの姿がかけ合わされて、涙を誘う。


……って、ダメダメ!

こんなところで泣いたら、あず兄にもっと心配かけちゃう!



違うことを考えよう。


うーんと、うーんと……。




「そういえば、知ってるか?最近“天使”に会った奴がいるらしいぜ」




そう、天使!

……え?天使?



今の声は、あず兄のじゃない。


雑貨屋さんの脇にある路地から、聞こえた。




単なる興味で、ちらりと目だけ横にずらせば、



「そこの路地に、不良っぽい奴が2人いるな」



あず兄がそう言ってため息を吐いた。


反射的にずらしかけた目を、ぐるんっと素早く隣へ方向転換させる。



「あず兄も気づいてたんだ」


「そりゃ、あんなでけぇ声で噂話してるからな」



それもそうか。

あれで気づかなかったら、鈍感すぎるもんね。



「まあ、無害そうだし、神亀の敵にならなそうだから放っておく」


「買い物に付き合って疲れたから、噂の詳細を突き止める元気がない、ってのが本音でしょ?なんでちょっと格好つけてるの?全然格好よくないよ?」


「……こんな時に毒づくなよ」




最後の一言はあまりに小さすぎて、何を言ってるかはっきりとは聞き取れなかった。



< 156 / 627 >

この作品をシェア

pagetop