絶対領域
脳内では、オルゴールの歌とオリの姿がかけ合わされて、涙を誘う。
……って、ダメダメ!
こんなところで泣いたら、あず兄にもっと心配かけちゃう!
違うことを考えよう。
うーんと、うーんと……。
「そういえば、知ってるか?最近“天使”に会った奴がいるらしいぜ」
そう、天使!
……え?天使?
今の声は、あず兄のじゃない。
雑貨屋さんの脇にある路地から、聞こえた。
単なる興味で、ちらりと目だけ横にずらせば、
「そこの路地に、不良っぽい奴が2人いるな」
あず兄がそう言ってため息を吐いた。
反射的にずらしかけた目を、ぐるんっと素早く隣へ方向転換させる。
「あず兄も気づいてたんだ」
「そりゃ、あんなでけぇ声で噂話してるからな」
それもそうか。
あれで気づかなかったら、鈍感すぎるもんね。
「まあ、無害そうだし、神亀の敵にならなそうだから放っておく」
「買い物に付き合って疲れたから、噂の詳細を突き止める元気がない、ってのが本音でしょ?なんでちょっと格好つけてるの?全然格好よくないよ?」
「……こんな時に毒づくなよ」
最後の一言はあまりに小さすぎて、何を言ってるかはっきりとは聞き取れなかった。