絶対領域
不良のどちらかが、有害な息を吐いた。
靴底が擦れる音と、ライターで火をつける音がする。
新しいタバコに火が付くと、新たな噂を喋り出した。
「逆に“悪魔”の噂は、よく聞くよな」
「そういえばそうかも。族をひとつ潰したとか、情報操作してるとか、どっかのお偉いさんを裏切ったとか、仲間を売ったとか」
「結構前に、あるグループの配下になったっていう胡散臭い噂も流れてたしな。……悪魔に関しちゃいろいろありすぎて、まじでわからん!」
「こっちもこっちで適当だよな、全体的に」
「あははっ、確かに!ひとつくらい、悪魔本人が噂してそうじゃね?」
「だったらウケるわー!」
賑やかな笑い声に包まれた。
どうやらツボにはまったらしく、長く笑っている。
「そんな笑うとこか?」
「私も同じこと思ってた」
あず兄の意見に、真顔で同意する。
てか、あず兄もちゃっかり聞いてたんだ。
「つーかさ、なんで『天使』とか『悪魔』とか呼ばれてんだろうな。噂でも通り名はよく聞くけど、誰が名づけてんの?本人?仲間?それとも俺らみてぇな奴?」
「やっぱ第三者じゃね?例えば天使だったら、天使みてぇな顔してたんじゃねぇの?」
「ぶはっ、天使みてぇな顔ってなんだよ!」
「人畜無害そうで、常に笑顔で、人をあの世に送りたそうな……」
「笑顔で俺ら不良をぶっ殺してんの?何それ、怖っ!それこそ悪魔じゃねぇか!」
想像してみよう。
……あらまびっくり、とんだサイコパスの出来上がり。
そんな人がいたら、噂になるどころか指名手配するよ。