絶対領域
――声が、聴こえる。
私の目覚めを待つ、声が。
目覚めを防ぐ、苦痛はどこにもない。
怖いのは変わらないけど、起きよう。
現実を、過去を、見つけるために。
「……ん、」
まつ毛を撫でる日差しが、いやに明るい。
少しずつ瞼を開けていけば、だんだんと日差しが心地よくなっていく。
「ね、姉ちゃん!?」
右横に、泣きそうな弟がいた。
「せーちゃん……」
おはよう、と不器用に唇を動かす。
せーちゃんは安堵したように、私の手を握った。
「目が覚めて、ほんとに、よかった……っ」
また心配かけちゃったみたいだね。
ごめんね。
「大丈夫か?」
「……あ、ずにぃ……」
パーカーを着てるせーちゃんとは反対の左側に、ブレザー姿のあず兄がパイプ椅子に座っていた。