絶対領域
ほんのり香るこの匂いは……保健室と同じ、消毒液の匂い?
さっきまでいた薄暗い倉庫とは違う。
どこかの個室らしきこの場所は、白で統一されていた。
「ここは、どこ?」
「病院だ。お前はここで3日も眠ったままだったんだ」
「3日も……」
だから皆、心なしかやつれてるんだ。
心配をかけた、っていうレベルじゃないよね。申し訳ないな……。
各段に軽くなった体を起こした反動で、ベッドがギシリと軋んだ。
たったひとつのベッド。小さな部屋。
真っ白な箱庭みたいなここは、病院の個室だったんだ。
「ここにいる奴ら、全員わかるか?」
あず兄の問いかけに、この部屋にいる全員を一人ずつ見回していく。
あず兄と、せーちゃん。
それから、あず兄の隣にいるしん兄。
しん兄の隣にいる薄い赤茶色の髪の男の子と、せーちゃんの隣にいる濃いピンクの髪の男の子は、わからない。
「……全員は、わからない。あず兄とせーちゃんとしん兄しか……」
ゆるく頭を振ったら、わからない2人の男の子が悲しそうに瞼を伏せた。
「……ごめんなさい」
「謝るな。お前が悪いわけじゃない」
しん兄はそう言ってくれたけれど、罪悪感を拭うことはできない。