絶対領域
「惹かれたんだ!どうしようもなく!」
恥ずかしげもなく、遠回しでもなく、直球で伝えてくる。
私のほうが照れちゃうよ。
胸の奥が、ひとつ、跳ねる。
へんてこな音を響かせて。
みーくんの笑顔を見て、またひとつ、高鳴った。
私は憧れの人じゃないのに。
一緒に逃げ回った日、回し蹴りをかましただけなのに。
……なのに、憧れの思いを増やして、慕ってくれるんだね。
「あ、ありが……」
「惹かれるな!!」
とう、まで言わせて、弟よ。
みーくんを見習って嬉しい気持ちを表現しようとしたのに、せーちゃんに全力で遮られてしまった。
「翠に姉ちゃんはつり合わない!なにせ姉ちゃんは完璧だからな!お前じゃ到底手の届かない、高嶺の花なんだ!だから惹かれるな!惹かれても忘れろ!次に行け!!」
「萌奈はなんでそんな強いの?何か武術とか習ってたのか?」
「話を聞け!!」
シスコンモードのせーちゃんは、やけに饒舌だ。
うんうんと頷くあず兄が横目に見えたけど、見なかったことにしておこう。
私もみーくんに乗じて、無視を決行した。
「習い事は、してなかった、けど……」
想起する、“あの時”。
痛くて、苦しくて、それでも懐かしくて、愛しかった。
長くて短い、“あの時”。