絶対領域
私のそばにいるせーちゃんにも、ランちゃんの独り言を拾えたようで。
「……しょうもねぇ理由」
ハン、と鼻で嘲笑った。
あー、また始まっちゃうよ。
くだらない暴れ馬合戦が。
「ただの腰抜けじゃねぇか」
「な、な、なんだと……!お、お前こそ、姉離れできねぇガキじゃんか!!」
「ガキって言うな!!」
「ぼ、僕はっ!」
低レベルな諍いを鎮めた、震えた大声。
全員の視線が、アプリコットオレンジの髪に集まった。
「……あ、えっと、その、ぼ、僕は……」
せっかく勇気を出して叫んだ声音は、急速にぼやけていく。
ゆかりんはおどおどしながら、右耳のピアスをいじった。
静まる空気の中。
花火だけが燦々と咲き誇る。
一瞬でほころび、一瞬で枯れる。
それは、まるで、人の心の脆さに似ている。
「ゆかりんは、なんで不良になったの?」
助け船を出してあげれば、ゆかりんは口の端の締め付けをやわらげた。
「ぼ、僕は……弱い自分を、変えたくて……」
「確かにゆかりん、なよなよして弱そうだもんね」
「はうっ……!」
「萌奈、無差別に精神攻撃するな」
打ちのめされて、胸元を抑えているゆかりんを気遣い、しん兄がため息混じりに忠告した。
精神攻撃?
夕方にゆーちゃんにも言われたけど……何のこと?