絶対領域
腑に落ちないまま、私はようやく1本目の花火を着火させた。
カラフルな光が、夜を彩る。
「僕はねぇ~!」
「うわわっ!」
ゆーちゃんがゆかりんの背後から、元気よく抱きついた。
ぎゅぅっと、首に腕を巻き付ける。
ゆかりんの顔に、よりいっそう陰りが増した。
「ユカを追いかけて、神亀に入ったの~」
皆に仲良しアピールをするゆーちゃんから、ゆかりんは力づくで身を引きはがした。
ちぇっ、とゆーちゃんは少し拗ねる。
神亀と双雷が邂逅した日。
ゆーちゃんが言っていたっけ。
『ユカが不良デビューしたって聞いて、真似してみたんだぁ。本当はユカと一緒のグループに入りたかったんだけど、わからなかったから神亀に入ったの~』
ゆーちゃんは、ゆかりんを腕の中に。
ゆかりんは、ゆーちゃんの鳥かごの外に。
重なり合うことのない領域を、渇望している。
「俺も、悠也と似てる」
しん兄がぶっきらぼうに口を開いた。
「しん兄も誰か追いかけたの?」
「俺の場合、追いかけたんじゃない。こいつの付き添いだ」
隣の『こいつ』を指差す。
メガネのレンズに、金髪が反射していた。
「あず兄の、付き添い?」
「俺を心配して付いてきたって、正直に言えよ」
あず兄が嬉々としてしん兄の肩に片腕を回すが、返答はない。
しん兄の不愛想は鉄壁で、崩されることはなかった。
けれど、メガネの奥の暗い青の瞳は、どこか歯がゆそうだった。