絶対領域




何に代えても、自分らしくいられる時間を守っていたかった。


安らげる時間のためなら、どんないじめにだって耐えた。




昔から断るのが苦手で、物事を頼まれたらなんでも引き受けていた、お人好しなところを利用されても。


料理や裁縫など、家事全般が得意なところをからかわれても。


なよなよ、おどおどしていて貧弱なところを虐げられても。




ユウのそばにいるために、耐え続けた。

もはや意地だった。



そうまでしてでも、居場所を汚されたくなかった。




「……だ、だけど、その時間はそう長くは続きませんでした」



僕をいじめていたクラスメイトが、僕とユウが遊んでいるところを偶然目撃してしまったんだ。



『お前、大宮悠也と一緒にいたよな?友達だったんだな。ついでにあいつもいじってやろうか』



ユウもいじめの対象になってしまう。


それだけは阻止したくて、その時初めて『やめろ!!』と反抗した。



でもそのせいで、今までよりも派手にいじめられて、体中アザだらけになった。




「ゆ、ユウが顔や体についた傷に気づちゃって、ひ、秘密を打ち明けざるを得なくなったんです」



全部さらけ出すと、『気づかなくてごめんね。話してくれてありがとう』と抱きしめられた。


結局失敗してしまった初めての反抗も、ユウは『頑張ったね』と褒めてくれた。



「そ、そしたらユウは、いじめに立ち向かうべきだって、ぼ、僕を応援してくれました」



ユウが僕に、新たな選択肢をくれたんだ。



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