絶対領域
私もカバンを肩にかけ、支払いを終えたオウサマと共にファミリーレストランをあとにした。
あのまま店内にいても、どうせあず兄の迷惑行為で退去させられていただろう。
「凰、こいつをあまり引っ掻き回さないでくれ」
お店と通行の邪魔にならないよう、路地に入ると、また叫びかけたあず兄を差し置いてしん兄が忠告した。
「迷惑だ」
「そうだ、もっと言ってやれ慎士!」
「俺が」
「……は!?」
見事な倒置法。
あず兄の口があんぐり開いてる。
「パトロール中に走り回るあずきを見かけて声をかけたら、『萌奈が凰にデートさせられてるんだ!探すの手伝え!』と否応なしに面倒ごとに巻き込まれ、仕方なく待機組の悠也にパトロールの交代を頼めば、文句と嫌みをグチグチ言われた俺の苦労がわかるか?」
いつになく饒舌に畳みかけたしん兄に、誰もかける言葉が見つからない。
一番被害を受けたのは、しん兄デスネ。
ドンマイ。
「頼むから、もうこいつを荒立たせないでくれ。これ以上迷惑を被りたくない」
「オーケイ、了解した。迷惑をかけてすまなかったな」
「……し、慎士、怒ってるのか?」
ため息を吐くしん兄、本当に反省してるのか不明なオウサマ、おろおろ焦るあず兄。
三者三様の珍しい光景に、失笑してしまう。