絶対領域
私とオウサマの仲を悩ましそうにしながら、あず兄はしん兄と一緒に騒動のほうへ走っていった。
心配しなくても、そういう仲じゃないよ……。
「あずき氏の先ほどの発言は、いわゆるフリというものであろうか?」
「違う」
「違うのか?」
ずっと黙っていたと思ったら、そんなこと考えてたの?
ボケじゃなく、本気なところが厄介なんだよね。
私は「違うよ」と念を押しつつ、大通り方面を一見する。
騒ぎようからして、割とここと距離が近い。
もう少し離れておいたほうがいいかも。
「ねぇ、オウサマ」
「何かね?」
「あっちのほうに避難しよ」
「ふむ、そうだな。あずき氏にユーを守るよう任されたゆえ、安全の確保は絶対条件である」
ミルクティー色とレッドオレンジ色の髪をなびかせながら、大通りとは反対方向に進んだ。
路地を抜けると、喧噪が嘘みたいに遠ざかる。
1本道が違うだけで、こんなに雰囲気が一変するなんて、ちょっと不思議。
学生や買い物帰りの人が、ちらほらと歩いていた。
右の奥にある若干急な坂道を、自転車で滑っていく人もいて、気持ちよさそうだった。