絶対領域
「オウサマは、さ」
道の端で、お店の壁に寄りかかる。
顔だけオウサマのほうに向けて、覗き込んでみた。
「今日のお話で、私の何がわかったの?」
私、相槌打ったり質問したりしただけで、ほとんど何も打ち明けてないよ?
それなのに、何か、わかったの?
「たくさん、わかったぞ」
溜めながら、歌う。
オウサマの声音は、どこまでもなめらかに、伸びやかに奏でられる。
「たくさん?」
「うむ、たくさんだ。ユーがどのように考え、想い、どのようなことに悲しみ、嬉しみ、どのような仕草をして、言葉を発して、我とトーキングしていたのか。真正面にいる我には、とてもよく伝わってきた」
「……やっぱりオウサマってエスパー?」
「ははっ、まさか。エスパーであったら、わざわざトーキングなどせんよ。何の変哲もない、どこにでもいる高校生であるから、我はこうしてユーと話し、理解しようとしたのだ。そのおかげで、我は、ユーについてたくさん知れた」
改めて感謝を告げられ、思わず「どういたしまして」と返した。
オウサマは、何の変哲もなくないし、どこにでもいる平凡さもないよ。
オウサマみたいな高校生がうじゃうじゃいてたまるか。