絶対領域
「私も、オウサマのことたくさん知れたよ」
オウサマの話を聞いて、今までよりももっと強く決心した。
紅組から皆を守ろう、って。
「オリとオウサマを自由にできるよう、頑張らなくちゃ」
ぐっと拳を握り、冷ややかに漏らす。
隣に聞こえたのか、聞こえなかったのか。
オウサマは神妙な横顔で、ヘアピンを留め直した。
ハッピーエンドを迎えられた、その時は。
どうか、幸せに気づいて、心からの笑顔を見せてね?
ねぇ、オウサマ。
突然、びゅっと強い風が吹き荒んだ。
片目を瞑って、そよぐ髪を抑える。
風、冷たい。
もうすぐ11月だもんなぁ。
震える手を重ねて、こすり合わせた。
「きゃーっ!!」
悲鳴!?
まさかこっちの道にまで騒ぎが……?
私とオウサマは条件反射で、声のしたほうに振り向く。
坂道を自転車で勢いよく下っている女性が、未だに甲高い声を轟かせ続けていた。
女性の顔は真っ青で、緊急事態であることは簡単に察した。
「止まってぇぇ……!!」
おそらくブレーキが壊れてしまったのだろう。
そのため、急な坂道でスピードが上がっていっても、停止できない。