絶対領域
しかも。
坂道の下には、ランドセルを背負った男の子がいた。
小学生は悲鳴に勘づいて、トラブルに気がついたが、いきなりことに足が竦んでしまっているようだ。
このままじゃ、どちらも危ない!
「萌奈氏、我は……」
「オウサマは男の子をお願い!」
「っ!うむ、了解した」
オウサマの言葉を遮って、指示を出しながら地面を蹴った。
オウサマは男の子の守護、私は自転車を食い止める。
衝突事故なんか起こさせるもんか!
全速力で坂を駆け上る。
坂道しんどいし、追い風は鬱陶しい。
だけど、バテたり諦めたりするわけには、いかない。
急いで助けに向かっている最中にも、自転車は速度を上げながら、男の子に近づいていく。
男の子はオウサマに任せたから、きっと大丈夫。
心配はしていない。
私は私のすべきことを、全うするのみ!
自転車のそばまでやってきて、持っていたカバンを前輪めがけて投げた。
自転車が大きくがたつき、乗っている女性もビクッとなる。
わずかに勢いが衰えた。
間髪入れずに、前方に設置されているカゴを両手で掴む。
力強く押しつつ、前輪に右足を添わせ、さらにスピードを落としていった。