絶対領域
はい、タンマ。
今日何度目かわからないけど、理解不能、事件です。
私はしゃがみこんで、男の子と同じ目線になって『ケガしてない?』『ならよかった』って言っただけ。
それだけだよ?
なのに、え?『兄ちゃん』って……えっ??
そんな偶然ある?
ピシリと笑顔が固まってしまった私に、男の子のキョトン顔が傾いていく。
照れはもうないようで。
今さっきまであんなに目を合わせようとはしなかったのに、今はばっちり交わっている。
その、男の子の、瞳は。
『父は綺麗なレッド、赤色であった。我には愛しい弟がおるのだが、弟は父と同じ目の色をしている』
右は濃い褐色、左は鮮やかな赤色。
綺麗に澄んだ、オッドアイだった。
「……ほ、本当に、オウサマの弟なの?」
「オウサマって?」
「我のあだ名である。彼女、萌奈氏が付けてくれたのだ」
「ふーん、変なあだ名」
「なぬっ!?そんなことないぞ。良い名であろうが!」
え。
さらっと無視された。
2人して返答してくれないの、なぜ。
個性的な兄と、無邪気な弟。
一見似てなさそうだけれど、やっぱり兄弟。
纏っている雰囲気……というか、オーラのようなものが、似ている。
不意打ちで爆弾発言を投下するところも。