平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
 ディオンの優しさに触れていくうちに、桜子は心を完全に許した。それははっきりとは口に出来なかったが、ディオンの姿が見えない日は会いたくて仕方なくなる。
 
 ザイダは献身的に、桜子に仕えてくれている。桜子に再び危害を加えないか心配していたカリスタも、そんな彼女を見直してくれたようだ。

「サクラさま、カリスタさまからプラムを。泉につけていたので冷えていますよ」

 桜子は『さま』をつけて呼ばれる身分ではないから、呼び捨てにしてほしいと何度も頼んだが、ディオン皇子が寵愛している方なので、と取り合ってくれないザイダだ。

「真っ赤でおいしそう! ここに座って! 一緒に食べましょう」

 ザイダが抱えるようにしている籠に、食べきれないほどのプラムがある。

「ええっ! 私のような者が、サクラさまとご一緒に食べるなんて出来ません!」

 テーブルに籠を置いて、急いで離れようとするザイダを、桜子は慌てて引き止める。

「ザイダっ! そんなことないわっ……」

 俯いてしまい困った様子のザイダに、桜子は考える。

「……命令よ。一緒に食べなさい」

 桜子は強く言いたくなかったが、そうでもしなければ彼女は一緒に食べてくれない。びっくりした顔のザイダだ。

「お願い。こんなにたくさんあるんだもの。カリスタもきっと、ザイダの分も用意してくれたんだと思うの」

 ザイダはおそるおそる桜子の近くへ戻ってくる。

「座って」

 桜子は斜め前の椅子の背を叩いて勧めた。

 極力、友達のようになりたいと桜子は思っており、腰を下ろして食べ始めてくれたザイダに笑みが深まった。

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