平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
「ああ。ここはそういう世界だ。そなたには酷だが……」

(今後またこういうことがあるかもしれない。サクラには慰めも必要だが、わかってもらわなければ)

 桜子は小さくため息を漏らした。

「……そうですよね……郷に入っては郷に従えという諺があります。この世界にいるのだから、受け止めなきゃ」
「郷に入っては郷に従え? 諺?」

 ディオンは初めて聞く言葉に首を傾げる。

「はい。国や場所で、風習や価値観が違うので、そこに入ったら従うべきだと私の世界では言われています。そういった文言を諺というんです」

 桜子の説明に、ディオンは感慨深げに頷いた。

 そこへエルマが近づいてきた。

「殿下、サクラさまの湯浴み支度が出来ました」
「サクラ、湯浴みをしてきなさい。エルマ、ザイダ。サクラにしっかり仕えるんだ」
「もちろんでございます」

 ふたりは両手を身体の前でクロスさせ、膝を折る。

 ディオンは桜子を立ち上がらせると、「ゆっくり休むんだよ」と言い、先に部屋を出ていった。

「サクラさま、ご案内いたします」

 エルマに言われて、桜子はキョトンとなる。

「ご案内って、大丈夫です。他の仕事をしてください」

 湯殿はいつもひとりで行っている。案内されるほどのことでもないと、首を横に振る。

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