平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
「いいえ。殿下は後宮の湯殿を用意するようにとのことでした」
「ええっ? わざわざ用意を……」
 
 桜子は、使われていなかった後宮の湯殿と聞いて驚く。

「行きましょう。ザイダがお手伝いいたします」

(後宮の湯殿は、ザイダに手伝ってもらわなければならないところなの?)

 不思議に思いながら、桜子はエルマについていく。ザイダが後ろからやってくる。

 広い後宮の奥まった場所に湯殿があった。いつも使っている使用人専用の湯殿へ行くのと距離はこちらのほうが近い。

 中へ入った瞬間、桜子は感嘆の声をあげた。

 美しい色彩豊かなタイルと、金や銀、色とりどりの宝石が埋め込まれた虎のような置き物。お湯が流れ出る口は蛇で、目がエメラルドの大きな宝石。見たことがないほどの豪華なものだ。

「ここが……後宮の……」

 あまりにもすごい内装で、桜子は呆気に取られる。

「では、ザイダ。サクラさまを頼みますよ」

 エルマは桜子をザイダに託して、湯殿を出ていった。

「私も初めて入りますが、さすが後宮の湯殿でございますね。皇妃さまがお使いになるのですから当たり前ですね」

 ザイダも驚きを隠せないようだ。

「皇妃さまが……そうよ、私が使ってはいけない場所だわ」

「サクラさまっ。いいえ! そんなことありません。先ほどもしっかり仕えるようにと。殿下がそう指示をされたのなら、サクラさまは皇妃扱いなのです」

 ザイダは顔を紅潮させて、興奮気味に伝える。

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