平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
「皇妃扱い? そんなわけないわ? きっと、ディオンさまは気の毒に思ってここを使わせてくれることにしたのよ……ご厚意に甘えて、入ります」

 ディオンの気持ちをくみ取って、桜子は服を脱ぎ始めた。
 

 その夜、桜子の部屋にはエルマとザイダが付き添っていた。ひとりになって不安にさせないようにとのディオンの命令である。

 桜子は横になって目を閉じた。すぐに黒ずくめの男たちが思い出される。脳裏から追いはらいたくて、寝返りを打った。

 そんな桜子の耳に、美しい音色が聴こえてきた。ディオンが楽器を弾いているのだ。

(ディオンさま、気持ちを落ち着けたくて弾いているのかな……。それとも……私のため? ううん。いつも弾いているもの。でも、この静かな曲は私の心を癒してくれている……)

 まるで子守歌のような曲を聴きながら、桜子はスーッと眠りに落ちた。
 

 一夜が明け、目を覚ました桜子は、ふと襲われたときのディオンの身のこなしを思い出した。

 侵入者の剣をかわしていたディオン。楽器ばかり弾いている者にはできない動きである。しかも桜子を庇いながら剣を避けていた。

「いくらいつも狙われているからって、あの動きは無理じゃ……」

 寝台の上で身を起こした桜子に、ザイダが近づいた。

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