平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
「サクラさま、おはようございます。ぐっすり眠れたようでよかったです」

 ひと晩中、桜子の様子を見守っていたザイダは笑みを浮かべる。

「ザイダ、おはよう」
「あの動きは無理って、いかがしましたか?」

 桜子のひとりごとがザイダに聞こえており、不思議そうだ。桜子は部屋の中を見回す。エルマはいなかった。

「……ザイダは宮殿で働きだして、どのくらい?」

 女官だから、ディオンのことを聞いても知らないだろうと思った桜子だが、聞いてみる。

「三年ほどに」

 なぜそんなことを言われるのかわからず、ザイダはキョトンとしている。

「ディオンさまは強い……? 剣を持って戦える?」
「えっ? 殿下が……。おそらく違うかと……。楽器以外のものを持っているのを見たことがありません」

 ザイダの返答は、桜子の疑問をさらに深めた。

(そんなはずは……必死に逃げようとしたから、あんな動きに……?)

「サクラさま。殿下はサクラさまが寝入ったあとも、しばらく弾き続けてくださっていました」

 眉根を寄せた桜子にザイダが言った。

「あれは私のためじゃないわ。ディオンさまは気持ちを落ち着けたかったのよ」

 そう言いきると、ザイダは思いっきり首を横に振る。


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