平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
「おめ~ん!」

 ニコは頭上で鞘を横にして、桜子の竹刀を防ぐ。かなりの衝撃があり、片手では防ぐことが出来ず、ニコは両手で鞘を掴み、頭の前のほうで横にしている。

 何度か面を打っていた桜子は、ニコの胴へ竹刀を振った。ニコはとっさに胴を鞘で庇う。

 俊敏に竹刀を操る桜子に、感心するニコだ。

 ディオンからは、軽い運動程度に付き合ってくれと頼まれていたニコだが、真剣にやらなければ痛みを伴うだろう。しかし、竹刀の弱点をすぐに見極めた。竹刀が長いため、次の攻撃のときに隙が出来る。

 桜子はニコに『面』や『胴』『小手』を繰り出すが、すべて防がれてしまうことがわかった。

(攻撃が全部バレている……あのときの刃のない剣の方が上手く扱えたかも……)

 さすが第三皇子の護衛だ。

 桜子は竹刀では、いざ刺客に狙われたときに戦えないことを悟った。『面』をニコの頭に振るが、鞘で防御され、後ろに飛ばされた。

「きゃっ!」

 地面に倒れた桜子に、思わず力を入れてしまったニコは慌てて駆け寄る。

「サクラさま! 申し訳ありません! お怪我は!?」

 ふたりを見ていたザイダも小走りで近づく。

「大丈夫です。ニコさん、謝る必要なんてないです」

 桜子はにっこり笑う。しかし、ザイダが小さな悲鳴を漏らす。

「サクラさまっ! 膝から血がっ!」

 ザイダの声に、ニコも桜子の膝頭へ視線を向ける。ザイダの言うとおり、膝小僧が擦りむけて血が出ていた。

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