平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
「では、大事な姪・ダフネとの婚姻に、お前は賛成なのね? ダフネは大事に育てられた娘。ディオン皇子の愛をただひとり寵愛する妃にならなければなりません」
「……もちろんです」

 桜子の胸がシクシクと痛む。

「わかりました。お前はディオン皇子とダフネの婚姻前に、アシュアン宮殿を出なさい。それが出来ないのならば、ディオン皇子の命はないと思いなさい。私は手段を選びません」

 桜子の喉の奥から、絞るような声が漏れる。

(イヴァナ皇后は、ディオンさまを殺すとはっきり言った……)

 その言葉に驚いた者は、桜子以外にもいた。ダフネ姫だ。

「皇妃さまっ! なにをおしゃっているの!?」

 ダフネ姫の顔色が青ざめる。

「お前を愛さないディオン皇子など、必要ありません」
「そんなっ! 皇妃さま! そのようなことはなさらないで!」

 桜子は、必死なダフネ姫に、ディオンを想う気持ちは本物のようだと感じた。ダフネ姫はイヴァナ皇后から桜子に、涙で濡れた視線を向ける。

「わかった? お前のせいでディオンさまは死ぬかもしれないの。宮殿を出ていくと約束して!」

 桜子は改めて、この世界のむごさが身に染みた。

(イヴァナ皇后は、姪が可愛すぎるあまり、彼女のわがままを突き通すつもりなんだ……)

 ディオンが軽んじられていることが悔しくて、ぎゅっと下唇を噛む。そして口を開く。

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