平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
 ラウリがロウソクを掲げて牢屋を照らすと、背を向けて誰かが横になっているのがわかった。

 黒髪と着ている服のせいで暗闇に溶け込んだのだろう。
 
 報告の通り、黒髪はベルタッジア国にはいない。この国の者はみな明るいブラウンの髪と明るい色の瞳だ。
 
 ディオンの母はベルタッジア人ではなく、海を渡った国の王女であった。彼女の髪は見事な黄金色で、瞳はアメジスト色。ディオンは強く母親の遺伝子を受け継いでいる。
 
 牢屋の扉が開けられた。ディオンは中へ入らず、ラウリとニコが横たわっている桜子に近づく。
 
 入口に背を向けている桜子は、少し前から意識を取り戻していた。後ろ手に縛られ、左を下にしているのは幸いだった。

 痛めている右が下であったら、痛みに襲われているであろう。

(誰か来た……)

 桜子は目を覚ましていても、辺りは暗く、不安で怖かった。そして気温や匂いで日本ではないとわかっていた。右肩が痛いのも同じ。

目を覚ましたら日本に戻っていることを期待していたが、少しずつ灯りが近づき、耳慣れない言葉が聞こえ、桜子の身体に落胆と緊張が走る。


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