平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
「そこのお前!」

 きつい口調で呼ばれた桜子は動けなかった。そのとき、上になっていた右肩をニコにギュッと掴まれた。

「いたあぁ……」

 掴まれた痛みに、桜子は叫ぶ。後ろ手に縛られていなければ、思いっきり擦りたかった。

 桜子の叫び声に、桜子の肩に手を置いたニコは驚き、パッと離す。桜子は痛みを逃そうと浅い呼吸を繰り返す。

「様子がおかしい」

 今までの男たちとは違う静かで低めの声が、苦しむ桜子の耳に届く。

(誰……? 声は優しそうだけど、助けてくれるとは限らない……)

 桜子はその声の持ち主を見たかったが、縛られていては起き上がることも出来ない。

「殿下、肩が痛むようです」
「若い娘だな。丁寧に起こせ」

 殿下と呼ばれた男の言葉に、桜子は小さく安堵する。

 ニコは桜子の左肩の下に腕を差し入れて、ゆっくり起こした。

 桜子はヒンヤリした石の上に座らされたと同時に、ロウソクの灯りで顔を照らされる。
 
灯りが目に飛び込んできて、眩しさに瞼を閉じる。

(この世界には電気がないのね……)

 まさかと思っていたが、本当に近代化されていない世界のようだ。今までの男たちは、桜子が歴史で勉強したかなり昔の服装をしている。

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