平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
 馬番には、自分が出かけることはディオンも側近も知っていると言ってあるから、彼から報告が行くことはないと桜子は思っている。
 
 
 桜子がディオンを想っていたその頃――。

 目を覚ましたディオンは、眠気と戦いながらフラフラと廊下に出た。

「殿下! どうされたのですか!?」

 廊下で控えていた女官は、壁にもたれるディオンに驚く。

「サクラは!?」
「ご朝食後、殿下を午前中は起こさないよう申しつけられ……お部屋にお戻りかと……」

 ディオンははっきりしない頭を勢いよく振る。

「医師と……イアニスを!」
「は、はい! ただいま!」

 女官が狼狽しながら駆けていった。

(サクラ、そなたはどうして……こんなことを……?)

 ディオンがハッと息を呑んだとき、ラウリとニコがやってきた。

「殿下!」

 ディオンの様子がおかしいことを、今廊下で会った女官に聞き、慌ててやってきたところだ。

「サクラを探すんだ!」

 ディオンは嫌な予感に襲われていた。

 そしてラウリとニコが調べた報告と、ディオンの考えは一致していた。

 桜子はこの宮殿にいない。

 政務室の椅子に座っているディオンが、ガクッと肩を落とした。

 この世界へ来た場所へ行ったのではなく、ルキアノス皇帝の元へ行ったに違いないという結論に至る。


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