平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
「その上から布を当てておけ。宮殿へ連れて帰る」

 ディオンは見知らぬ国から来た桜子に興味があった。汚れた顔をしているが、凛とした美少女である。華奢で我慢強い娘は、退屈な日々を送る自分を楽しませてくれそうだとディオンは思った。

「連れ帰るのは、反対でございます」

 イアニスは桜子を信用していない。もちろんディオンもそうだ。

「娘は怪我をしている。お前たちはやられると? ニコ、丁重に宮殿へ。右腕に気をつけろ」

 ディオンの命令に、ニコは右胸に手を当てて頷いた。
 

 桜子は宮殿の右翼にある三階の一室を与えられた。右翼は宮殿で働く女性たちが住むところである。

 桜子には、ラウリの妹エルマを監視役としてつけた。

 二十歳のエルマは女ながら、幼い頃からラウリやニコと一緒に剣の鍛錬をしており、ふたりに勝つことはできないが、それなりに戦える腕の持ち主だ。普段は女官頭として、ディオンに仕えている。

 部屋の寝台に寝かされた桜子は、エルマに服を脱がされても目を覚まさない。

 宮殿まで来る間、緊張の糸がプツ゚ッと切れたように、桜子は眠ってしまっていた。暗闇の中を進む馬の揺れや、疲れすぎたせいだった。

「なんなの、この服は……」

 首元まで閉じられた白いシャツをなんとか脱がすと、胸を覆った白い布に、エルマは見入った。この国の女たちはブラジャーなどない。

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