平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
「殿下、あの子たちは仕事をしなくてはならないのですよ。そういつも甘やかして……」

 カリスタは首を左右に振り振り、呆れたような声を出す。

 ディオンは楽しそうに口角を上げてから、アメジストの瞳で桜子を認める。

「私が音楽を奏でるのは女子のためだ。ああ、サクラもいたのか。肩はどうだ?」

 桜子はディオンの言葉に心の中でギョッとなりつつ、笑みを浮かべた。

(女子のためって……もしかして、ディオンさまは女ったらし……?)

「もう動かしても痛くなくなりました。ありがとうございます」

 丁寧に口にしたつもりだったが、ディオンの首が少し傾げる。

「サクラ、少し聴いていけ」
「えっ……」

 突然の誘いに桜子は戸惑い、カリスタを見る。

「それはいいですね。サクラ、せっかくです。ここで聴いていきなさい。案内は明日にでもしましょう」

 カリスタは皺のある顔を緩ませて去っていく。

「えっ。あ、あの……」

 ひとり残されてしまった桜子は、その場に突っ立ったままで困る。

「サクラ、そこの長椅子へ」

 ディオンのいる窓からまっすぐのところに、木材で造られた長椅子があった。大きな木が日陰を作っている。

 
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