平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
 幸い渡り廊下を進んですぐが、桜子が住まわせてもらっている部屋だ。

 早く着いてほしい桜子の気持ちとは裏腹に、ディオンの足取りはゆっくりだと感じる。

「あ、あの……」
「なんだ?」
「重いですか……?」

 大変なので下ろしてくださいと言おうとしたのに、桜子の口から出たのは『重いですか……?』だ。

 ディオンのアメジスト色の瞳が、黒い瞳を捉える。

「あ、ち、違うんです。大変なのでっ……」

 腕の中で頭を左右に振る桜子に、ディオンは小さく笑う。

「重いな。私は楽器しか持ったことがない」

 桜子はその言葉にギョッとなる。

「ひえ……お、下ろしてくださいっ、腕になにかあったら困ります!」

「困ったな。下ろしたくないんだ」

(えっ……?)

 ディオンの腕の中で、桜子は身を硬くした。

「い、意味がわかりません。早く下ろしてください」
「黙っているんだ」

 やんわりと言われた桜子は、押し黙るしかなかった。そこで、桜子の部屋に到着した。ちょうどやってきたエルマが慌てて扉を開ける。

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