平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
「いいえ。女子と男子で試合は別です。私が通っていた高校は女子だけの学校でした。大学も女子大です」

 桜子は中学から女子校に通っており、男子と付き合ったことはない。だから男性に免疫がないと言っても過言ではない。

 それなのに、超絶美形の皇子さまがそばにいる世界へ来てしまい、桜子はどうしたらいいのかわからない。信じられない立場である男性に容姿を褒められ、髪に触れられているのだ。

 雷のときは恐怖でドキドキだったが、今はディオンを意識して、胸が高鳴る。気にしないようにしようとしても、ディオンのようなカリスマ性がある超絶美形が相手では、無理である。

 そのとき、扉が叩かれてエルマが入ってきた。

 寝台の上にディオンがいるのを目にして、エルマの目が大きく見開く。後ろにいた女官も驚いて、持っていた盆を落としそうになった。

「で、殿下っ! いったい……」

 エルマは絶句してしまった。

 そんなエルマにディオンは笑みを浮かべ、スッと寝台から下りる。

「夕食か。サクラ、近いうちに一緒に食べよう。エルマ、サクラのお世話を頼むぞ」

 ディオンはゆったりとした足取りで部屋を出ていった。

 残された桜子はなにを言えばいいのか、なにも言わないほうがいいのか、困った。そんなことを考えながら、床に足をつけた桜子にエルマが口を開く。

「殿下を誘惑したのね!?」
「ええっ? ゆ、誘惑なんてしていません!」

 慌てて否定したが、エルマは明らかに納得していない様子。口元をギュッと引き結び、部屋を出ていった。

< 62 / 236 >

この作品をシェア

pagetop