No border ~雨も月も…君との距離も~
「紗奈、ごめん。 仕事の邪魔しちゃったね。

ママさん……忙しそうだったのに、申し訳ないよね……。」

「 (笑) うん。でも……甘えよう。

大丈夫、甘えた分 ママには絶対 倍にして返すから……!」

「 うん。 ありがとう……紗奈。」



少し甘えたら……また 歩き出せる。

甘えられる私は、すごく幸せ者だと思う。


私と鈴ちゃんは 金沢の街を歩いた。

金沢城下公園、21世紀美術館、香林坊の交差点……

尾山神社。

東山茶屋街で あんみつを食べたり……。

「 鈴ちゃん、笑ってっ♡ 」

「 金箔入りの あんみつーーーー!!」

「 映え~っ!! 」

私はスマホ越しに 笑う。

「 タク…っ(笑) この黒豆が嫌いで、全部 私のお皿にのせるのっ~(笑) 」

本当は タクちゃんが見ていたであろう……鈴ちゃんの笑顔……。

一歩、一歩……タクちゃんと歩いた道を 大切に踏みしめて、その澄んだ冬の空気を吸い込む。

鈴ちゃんの瞳に、涙はなくて……


“ どう……生きる。”


その答えを 探しているような……

その答えを もう…知っていような……

鈴ちゃんは しっかりと、タクちゃんとの思い出を刻んで 前を見ようとしていた。

ノロケ話が 楽しくて、とても 切なくて……切なくて……

こんなに 恋の話を羨ましく思ったことはない。

鈴ちゃんにとって この恋は 一生涯、汚れることはないのだから。

その大きさが……

この先 どれだけ彼女を苦しめるのか…彼女を縛るのか…鈴ちゃんにも、私にも想像できなかったけれど、

二人 寄り添って歩いた この道や

ここで この場所で、彼に言った小さなワガママ…

繋いだ手。 包まれた温もり……

次に逢う、約束。

そんな 些細な思い出のひとつひとつが 必ず 彼女を支えてくれると、 私は信じたかった。

「 紗奈……私が おばぁちゃんになって、タクの所へ行けたとしたなら……覚えてくれてるカナ。

私だと わかってくれるカナ。」

この人生の果てに……鈴ちゃんには恋人が待ってる。

「 うん。 きっと…すぐにわかる。」

「 私のこと…もう一度、好きだと言ってくれるカナ?」

「 うん。言ってくれる♡ 」

「 ……(笑) おばぁちゃんだよ…」

「 (笑) うん…平気っ。」

「 (笑)!!」


“ どう…… 生きる ”


私は 沢山 頷きながら…鈴ちゃんの歩幅に合わせて歩いた。

どう 生きたら…この世の果てで褒めてもらえるのだろう。


そして、

やっぱり 最後に辿り着いてしまう この場所。


ー BIG4 ー


< 224 / 278 >

この作品をシェア

pagetop