No border ~雨も月も…君との距離も~
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私は BIG4 の 入口の前で…ひとつ 深呼吸をする。

ガラス扉のすぐ横に 自販機。

隅に置かれた ベンチと 円柱の灰皿。

ほぼ4年振りの この場所……。

ガラス扉に 無造作に貼られたポスターも以前と同じ。


平日の夕方4時。

今日のBIG4は、ライブの予定も無く…スタジオ練習にしては 早いせいか パーキングに車もなく、

まだ……しんとしている。

こんなに 早い時間のデリバリーは珍しい。

「 失礼しま~す。 オーガニック・GARDEN です。
お届けに参りました。」

機材の匂いと 煙草の香り…… 4年前と同じ。

懐かしい……空気と感覚。

受け付けには 誰もいなくて、私は 勝手を知る事務所も覗いてみるが 小川さんの姿は見当たらない。

A・B・C のスタジオの扉から音が 溢れてこない所を見ると……ここも誰かが使っている様子はない。

私は…ふと、ホールへと続く 登り階段を 見上げる。

思わず……カラアゲ弁当を 受け付けカウンターに置くと、しんとする 暗がりに吸い込まれる様に 一段一段を登る。

重たいホールの扉を 両手で押す。

客電が落ちたまま 薄暗いホールにステージの照明だけが灯る。

銀のマイクスタンドが、その照明に眩しくて……懐かしくて……

無意識にその場に吸い寄せられる。

心が……動く。

胸が……ぎゅっと……あの頃と同じく 掴まれる。

あの頃、

シンをズルいと思った。

私を見つめる瞳も……

あんな風に……ケラッと笑うのも……

私 だけに歌ってくれているような気持ちになる……

歌も……声も……

全部。

全部……彼は 私の真ん中にいて

ズルいと思った。



だから、

今……

こうして……


私は、目を疑う。

息が 一瞬にして 出来なくなるよ。

夢を……見てる?


ズルい。

彼は……いつだって、ズルい。



「 紗奈、 ただいま。」


なんて……言って、

普通に……

ケラッと……笑う。


シンは ズルいよ…………。







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