エリート御曹司は獣でした
ふわっとあくびをして事業部に入り、まっすぐに自分のデスクへ向かう。

始業十五分前。

私の両隣の社員はまだ出勤していないが、斜め向かいの席の久瀬さんはノートパソコンを起動させているところで、「おはよう」と爽やかな笑顔を向けてくれた。


「おはようございます……」


ポッと頬が熱くなったのは、彼に恋をしているからに違いない。

好きだとはっきり自覚すれば困ったことに、恋人になりたいという欲張りな願望も、おのずと湧いてしまうものである。


一昨日の土曜日は、彼の自宅に行き、四回目の治療をした。

狼化した彼に押し倒されてキスされて、変身が解けたのは二分十八秒後。

少しずつ確実に変身時間が短くなっていて、ふたりでその成果を喜んだのであった。


このまま久瀬さんと濃密な時間を過ごしているうちに、恋人関係に発展しないかな……。


期待半分と、そんなにうまくいくわけないという後ろ向きな気持ち半分……いや、後者が三分の二ほどか。

容姿は普通で女子力は低く、年中、肉に夢中という変わった特徴を持つ私は、今まで男性にモテたことがなく、エリート御曹司でイケメンの久瀬さんと不釣り合いなのはよくわかっている。

それでも奇跡的に、彼も私を好きになってくれたら……と、淡い期待を抱いていた。
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