エリート御曹司は獣でした
彼の微笑みひとつで、朝から乙女な気分にさせられた私は、着席してノートパソコンを開き、始業準備に入る。

朝礼が済めば、静かなデスクワークが二時間ほど続いて、時刻は十一時になろうとしていた。


凝り固まった首を回して一旦集中を切ると、頭の中に浮かんでくるのは、和牛さんたちの顔である。

昼休みまで待てない私は、肉チャージしようと、コソコソ動きだした。


両隣の席の男性社員に見られていないことを横目で確認し、そっと引き出しの中段を開ける。

そこからビーフジャーキーをひと袋、取り出そうとしたのだが……「えっ!?」と驚きの声をあげてしまった。

五袋ストックしておいたはずのビーフジャーキーとお徳用サラミが忽然と消えており、代わりにチョコレート菓子が大量に詰め込まれているのだ。


これは一体、なにが起きたの!?


驚き動揺する私に、「どうした?」と声がかけられた。

顔を上げれば久瀬さんと視線が合う。

なにかの書類を手に立ち上がったところの彼は、心配そうな目を私に向けている。

両隣からも先輩社員の視線を感じて、慌てて引き出しを閉めた私は、「いえ、なんでもないです。すみません」と作り笑顔でごまかした。

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