エリート御曹司は獣でした
そう考えた私は、カーディガンのポケットにチョコ菓子のひとつを忍ばせると、席を立って歩きだした。

綾乃さんと香織に、ビーフジャーキーを返してもらおうと思ったのだ。

隣の第二課のデスクが並ぶ島には、綾乃さんの席がある。

そこを目指したが、どこへ行ったのか綾乃さんは不在で、それならばと通路をさらに奥へ進み、第三課の香織の席へ向かった。


香織のデスクは、通路よりの端である。

真剣な顔をしてノートパソコンのキーボードに指を走らせている香織に近づき、横から顔を近づけて「ねぇ」と声をかけた。

「わっ!」と肩をビクつかせて驚いた香織は、「え、もう昼休み?」と目を瞬かせて私に問う。


同じ事業部であっても、私と香織の仕事内容に接点はないに等しい。

私の所属する第一課は食品包材を扱っており、香織の第三課はコピー用紙や広告チラシなどの紙製品を担当している。

そのため仕事中に私が話しかけるとしたら、『そろそろお昼にしない?』という誘いくらいなので、香織は勘違いしたようだ。


「まだお昼じゃないよ。あのね……」
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