エリート御曹司は獣でした
朝から嫌な気分にさせられた私は、座面をひと睨みしてから、荒々しく引いた椅子に腰を下ろした。

この椅子には、低反発クッションを敷いている。

窓際に近い席であるから、三年も使えばすっかり日焼けして、元は濃いオレンジ色のチェック柄だったのが今は山吹色に見える。

カバーの生地は一部が擦り切れて破れ、そろそろ買い換えなければと思っていたところだ。


このクッションも、一昨日、誰かにいたずらされた。


敗れた箇所が、布製品に貼り付けるタイプのワッペンで補修されていたのだ。

それも、私の好みを意識してか、骨つき肉の刺繍ワッペンで、つい可愛いと思ってしまった。

これでしばらくは買い換えなくて済みありがたいことなのだが、勝手にやられると気味が悪い。


これだけではなく、昨日も似たような出来事があった。

それは私が営業部に打ち合わせに出かけ、席を外している間に起きたことで、机上に置いていた飲みかけの緑茶のペットボトルが、戻ってきたら新品にすり替わっていたのだ。

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