エリート御曹司は獣でした
思い当たる節が多過ぎて、どれが嫌がらせをするまでの引き金となったのかはわからないが、私に実害を与えないと気が済まないほどにイライラが募っていたようだ。

久瀬さんの彼女の座を長年狙っている乗友さんなので、彼に近づく女を許せないと思う気持ちは、わからないでもない。

けれども、それなら不満を直接言葉にして私にぶつければいいのに、こんな憂さ晴らしの仕方は卑怯だ。


私が腹を立てている最大の理由は、八重子ちゃんを利用したところにある。

天然過ぎて困ることもあるけれど、八重子ちゃんは人を嫌ったり妬んだりしないピュアな子である。

ましてや誰かをいじめてみようなんて考えることは、絶対にない。

そんな無垢な八重子ちゃんを騙して、悪事に加担させるとは……許せない。

そしてなによりも、チョコはいらないから、奪ったビーフジャーキー返してよ!


箸を握りしめてフロアを見回したが、乗友さんの姿はなかった。

きっといつもの取り巻きのような同期と三人で、ランチに出かけているのだろう。

ひょっとすると今頃、私に嫌がらせをしていることについて、楽しく話しているところかもしれない。


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