エリート御曹司は獣でした
決戦は日没時。
定時を十分ほど過ぎ、乗友さんが帰り支度をしているのを見た私は、自席で静かにノートパソコンを閉じた。
久瀬さんは、後輩社員からプランニングの相談を受けている真っ最中だが、立ち上がった私に気づくと、「帰るの? お疲れ様」と声をかけてくれた。
「いえ、ちょっと飲み物を買いに行くだけです」
嘘をついた私に彼は、目を瞬かせる。
財布もスマホも持たず、勇ましい顔をして飲み物を買いに行くとは、どういうことなのかと疑問に思われたのかもしれない。
彼の表情からそれが読み取れたが、『飲み物ではなくトイレです』と嘘をつき直している暇はない。
乗友さんが帰ってしまいそうなので、私は急ぎ足で西側のドアから部署を出て、東側のドアへ回る。
そして廊下で彼女を待ち伏せた。
すぐに出てきた乗友さんは、仁王立ちしている私とぶつかりそうになり、「キャッ!」と声を上げる。
「すみませーー」と反射的に謝りかけた彼女だが、相手が私だと気づくと、途端に迷惑そうな顔をして「邪魔よ」と冷たく非難した。
「乗友さんにお話があります」
私のその言葉と険しい表情だけで、彼女は用向きがわかったようだ。
けれども慌てることも悪事を隠そうとすることもなく、余裕の笑みを浮かべて言う。
定時を十分ほど過ぎ、乗友さんが帰り支度をしているのを見た私は、自席で静かにノートパソコンを閉じた。
久瀬さんは、後輩社員からプランニングの相談を受けている真っ最中だが、立ち上がった私に気づくと、「帰るの? お疲れ様」と声をかけてくれた。
「いえ、ちょっと飲み物を買いに行くだけです」
嘘をついた私に彼は、目を瞬かせる。
財布もスマホも持たず、勇ましい顔をして飲み物を買いに行くとは、どういうことなのかと疑問に思われたのかもしれない。
彼の表情からそれが読み取れたが、『飲み物ではなくトイレです』と嘘をつき直している暇はない。
乗友さんが帰ってしまいそうなので、私は急ぎ足で西側のドアから部署を出て、東側のドアへ回る。
そして廊下で彼女を待ち伏せた。
すぐに出てきた乗友さんは、仁王立ちしている私とぶつかりそうになり、「キャッ!」と声を上げる。
「すみませーー」と反射的に謝りかけた彼女だが、相手が私だと気づくと、途端に迷惑そうな顔をして「邪魔よ」と冷たく非難した。
「乗友さんにお話があります」
私のその言葉と険しい表情だけで、彼女は用向きがわかったようだ。
けれども慌てることも悪事を隠そうとすることもなく、余裕の笑みを浮かべて言う。