エリート御曹司は獣でした
「秘密にしてと頼んだのに、あの子、話してしまったのね。使えないわ」

「そうです。八重子ちゃんはいつだって純粋で使えない。だから二度と利用しないでください。文句があるなら、私に直接はっきりと言ったらどうですか」


正論をぶつけて、乗友さんを追い込んでいるつもりであった。

批判されるべきは彼女で、優位な立場にいるのは被害者の私だと思い強気に言ったのだが、彼女はクスリと笑って言葉を返してくる。


「直接はっきりと言っていいのね? よかったわ。言いたいことが山ほどあるのよ」

「え……山ほど?」

「そうよ。ゆっくり話せるように会議室に移動しましょう」


少しの焦りも見せてくれず、やけに堂々とした乗友さんに、「はい……」と返事をする声が不安に揺れてしまった。

彼女は私より五センチほど背が高く、パンプスのヒールは七センチほどありそうなので、私は上から見下ろされている。

退社時間なのに化粧崩れは見られず、大きな瞳にアイラインがくっきりと引かれて、目力が強い。

どこのブランドかはわからないが、高級そうなベージュのチェスターコートが、スタイルのよい彼女によく似合っていた。

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