エリート御曹司は獣でした
それに対して私は、ノーブランドの安物のブラウスと膝下丈フレアスカートに、量販店で買った無地のカーディガンという戦闘力の低そうな出で立ちで、加えて平凡すぎる容姿である。


こんな私で、口論に勝てるだろうか……。


最初の威勢はどこへやら。

美人に居丈高に振る舞われたら、尻込みしたい気分になり、私の心は焦りだす。

お話はまた今度……と逃げたくなったが、それに気づかれたのか、ニヤリと口の端を上げた乗友さんに先手を打たれた。


「あなたから言い出したことなんだから、逃げないでね。私は化粧室でメイクを直してから行くわ。先に大会議室に行って待っていて」


メイクは、一切崩れていないように見えますが……。

今以上に装備を整えられると、勝てる気がしなくて怖い。

けれども乗友さんは既に早足でお手洗いへと消えてしまったので、このまま黙って帰るわけにいかず、私はこの階にある大会議室へ向かった。


無人の会議室に入り、電気をつける。

窓辺に寄れば、ビルの外壁に切り取られた空は、紫色と藍色の寒々とした二色の層をなしていた。

三月後半に入り、日中は暖かさも感じるけれど、日が落ちれば肌寒い。

前を開けていたカーディガンのボタンを閉めつつ、私は自分を励ます。

大丈夫。もう嫌がらせをしないという約束さえ取り付ければ、私の勝ちなんだから……。
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