エリート御曹司は獣でした
そんな風に、全くの無頓着ではなく、私だって少しは女子力を高めようという意識が出てきたと言いたくて、乗友さんたちの顔を順に見た。

「言い返せるの?」と問いかけられ、口を開きかけた私だが、結局は首を横に振って視線を逸らしてしまう。

考えるだけで、まだなにも行動に移していないため、反論してもかえって馬鹿にされるだけだと気づいたからだ。


三人に比べると貧相な服装をしている自分を今更ながらに恥ずかしく思い、私は自分の体を隠すように抱きしめた。

クスクスと嘲るような笑い声を浴びせられ、さらなる刃が向けられる。


「素肌に自信があるのかなんなのか知らないけど、メイクぐらいしなさいよ」

「社会人の自覚があるの?」


「え……?」と呟いて目を瞬かせたのは、メイクをしているからである。

もしかして、ずっとノーメイクだと思われてたの? 嘘……。


今まで一度もメイクをせずに出社したことはないので、それには動揺するところだ。

ファンデーションと薄い色味の口紅だけなのが、そう思わせた原因なのか。

しかも社内でメイク直しをしないので、退社時間になる頃にはすっかり落ちて、すっぴんと間違われるのも仕方ないのかもしれない。
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