エリート御曹司は獣でした
私に半歩近づき、下女を見下す嬢王様の如き視線を向けてくる彼女が、ニヤリとしてとどめを刺しにきた。


「このまま肉と恋愛していなさいよ。久瀬くんに接近しようと頑張っているようだけど、全てにおいて似合わないわ。相田さんみたいな肉女を、彼が選ぶはずないでしょう。諦めてビーフジャーキーを食べていなさい。あなたの机から回収したものを、倍にして返してあげるから」


後ろによろけた私は、窓辺に背中をぶつけて力なくうなだれる。

も、もう駄目だ……。

ビーフジャーキーを倍にして返してもらっても嬉しくないと思うほどに、心がえぐられてしまった。

私のような肉女では、どう頑張っても久瀬さんとはお似合いになれない。

実にその通りで、なにも言い返せません……。


大会議室には三人の高笑いが響き、「身の程知らずだというのが、ようやくわかったのね?」と乗友さんが私に確認してきた。

それに頷こうとした、その時……。


ドアが勢いよく開けられて、焦り顔を覗かせたのは八重子ちゃん。

私たち四人の姿を見つけた彼女は、後ろに振り向くと、廊下の奥にいる誰かを大声で呼んだ。


「奈々さんがいました! こっちです!」


廊下を走る足音が大きく聞こえ、八重子ちゃんの後ろから現れたのは久瀬さんで、彼もまた焦りを顔に浮かべていた。

八重子ちゃんと久瀬さんが、私を探しに来たようだけど……え、なんでその組み合わせ?

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