エリート御曹司は獣でした
そうだよね。フォローに困るよね。

私の肉好きが異常で理解しがたいことなのは、わかってる……。


久瀬さんは優しいから、いつも嫌な顔をせずに肉を食べる私を見守ってくれるけど、内心では呆れていたのだろう。

それを察してさらなるダメージを受けた私は、スーツ姿が凛々しい彼の後ろ姿を見つめながら打ちひしがれる。


ああ……数年ぶりの私の恋は実らず、ミンチにされてしまった。

今夜は、この挽肉状態の恋心でメンチカツでも作り、やけ食いしようかな……。


「身の程知らずですみません……。久瀬さんに似合わない肉女で、ごめんなさい……」



深い痛手を抱えた私はうわ言のように反省の弁を呟いて、久瀬さんの陰からフラフラと出て歩きだす。

これ以上、傷つきたくないので、とにかくこの場から立ち去りたいと思い、ドアへ向かっていた。


すると、三歩しか進まぬうちに、強く腕を引っ張られて身体が横に傾く。

「キャッ!」と声をあげた私を受け止め、肩を抱いたのは久瀬さんだ。

驚く私が拳三つ分の至近距離で彼の顔を見上げれば、素敵な微笑みを与えられて鼓動が跳ねる。

ときめきと同時に、彼がなにを思って私を抱き寄せたのかと戸惑ってもいて、急に真顔になった彼の言葉を、緊張して聞いていた。

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