エリート御曹司は獣でした
「久瀬さんが、ついに認めたよ」

「本当に付き合ってるんだ。異色の組み合わせだね」

などと近くにいる者同士が勝手に話し出すから、最奥の席で立ち上がった部長がなにかを訴えていても、その声は皆に届かない。


やっと驚きから回復した私は、今後のことが心配になり、彼の膝に座ったままで恐る恐る問いかける。


「く、久瀬さん、そんなこと言って、大丈夫ですか?」


どうやら彼は勢いで言ってしまったわけではないようで、余裕の笑みを浮かべている。


「奈々子は嫌?」と問い返され、下の名前で呼ばれたことに胸が高鳴った。


本気で恋人を演じるつもりなんだ……。


私を守ってくれようとしている彼に感謝しつつ、首を横に振って「嫌じゃありません。嬉しいです」と本心を伝える。

すると彼はフッと笑って私の耳に口を寄せ、他の人には聞こえない小声で言う。


「それなら問題ない。恋人関係にあると言っておけば、コソコソせずにすむ。治療の日時も相談しやすいし、もっと一緒に出歩けるから、いいことしかないだろ」


出歩けるって……デートまでしてくれるんですか!?


< 190 / 267 >

この作品をシェア

pagetop