エリート御曹司は獣でした
久瀬さんとの偽恋人関係が始まって、ひと月ほどが経ち、春風が私の肩下までの黒髪をなびかせる。


香織と綾乃さんには、私を嫌がらせから守るための偽恋人なのだと説明し、信じてもらえたが、社内の他の人たちは本当に交際していると思っているようだ。

乗友さんには今でも顔を合わせるたびに睨まれ、他の女性社員の一部からも嫉妬の目を向けられるけど、実害がないのは、御曹司の久瀬さんという大きな後ろ盾があるからに違いない。


社内は概ね平和で私は真面目に仕事に励み、そして土曜の今は、久瀬さんとのデート中である。

人情ものの映画を観た後、ふと目についた多国籍感のある雑貨店に入り、細々とした珍しい商品を見て歩く。


「あ、これ可愛いですね」と私が指をさしたのは、フォトフレームだ。

茶色の牛や豚、羊に鶏に鴨、私の食欲を誘う動物たちの飾りがついていて、肉パーティーをした時に撮った写真を入れたくなる。

この店は、店主が直接海外で買い付けをしているセレクトショップのようで、値段は三千五百円と思ったより高く、私は購入に迷った。

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