エリート御曹司は獣でした
不思議に思った直後に、雨ではないと気づく。

せっかく新調したワンピースの袖や肩に、茶色のシミが点々とついている。

足を止めた久瀬さんも驚いており、私たちが揃って空を見上げたら、追加するように茶色の液体が降ってきた。

避けきれずに数滴を顔に浴びてしまった私たちは、ハッとする。


「く、久瀬さん、この味って」

「ポン酢だ……」


どうしてポン酢が降ってくるのかと驚き慌てる私が再度上を見れば、すぐ横にあるマンションの、通りに面した二階の窓から男性の腕が突き出されている。

その手にはポン酢の瓶が握られていて、キャップを外した瓶は逆さまにされていた。

目を見開いた私は、その窓から漏れる若い男女の声を聞く。


「ちょ、ヒロシ、なにやってんの!? まさか窓から捨てたの?」

「お前が、賞味期限切れてるから捨てろって言ったんだろ。台所まで行くのめんどいし」

「下に誰かいたらどうすんのよ!」

「そんな漫画みたいに不運な奴、いねーだろ」


ヒロシ……ここに不運な私たちがいるんですけど!


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