エリート御曹司は獣でした
ああっ、真面目な彼が引っ込んで、また狼の意識の方が強くなっちゃった!


「久瀬さん、スッポンと望月フーズです。スッポンポンでもモチモチでもないですよ。この問題で、悩んで焦って、早く元に戻ってください!」


私だって必死に闘っている。

いつものように尻や胸をまさぐられ、甘い声を上げそうになるのをグッと堪えて、どうしても高鳴る鼓動と、流されてみたくなる誘惑に抗っているのだ。

私が負けてしまっては治療にならないから、彼の胸を両手で押して、離れようともがいていた。

けれども当然のことながら、彼の方が遥かに力が強いので、抱擁を解くことはできず、艶かしい唇が、私の唇を目掛けて距離を詰めてくる。


唇が触れ合うまで、あと三センチ。

久瀬さんが好きだからキスしたいという気持ちが湧いてしまうけど、『偽恋人の分際で厚かましい!』と自分を叱りつけ、顔を背けて叫ぶように言った。


「スッポン鍋、どうしますか? 長野さんを怒らせて望月フーズから仕事依頼がなくなれば、うちの課の損失は年間一千万円ですよ!」

< 205 / 267 >

この作品をシェア

pagetop