エリート御曹司は獣でした
こんな素敵な人が、ポン酢で不自由な人生を送っているなんて、あまりにも気の毒だ。

なんとしても私が、効果的で新しい治療法を考えなければ。

そのためには、なにかヒントになる情報が欲しいよね……。


しばらく悩んでいると、料理が次々と運ばれてきた。

久瀬さんは三種盛り合わせの前菜と、スープ、魚料理を、コースのように組み立てた注文をしていたが、私は肉料理しか頼んでいない。

チキンのマスタード焼きに、子羊背肉のロティ、特選牛フィレ肉のグリエ、トュフソースがけが、数分差でドンと目の前に出される。


「美味しいです。涙が出そうなほど美味しいです!」


友達と外食するとすれば、焼肉や焼き鳥屋、肉料理のメニューが豊富な安居酒屋がほとんどで、こういう洒落た店は選ばない。

従ってセレブ感の漂うフランス料理も滅多に口にできないので、夢中になって頬張り、マナーや優雅さなんて気にしてはいられなかった。

肉にがっつく私を見ても、久瀬さんは引いたりしない。


「いつ見ても、気持ちのいい食べっぷりだな」と目を細めて、楽しげに笑うだけである。


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